AIの進歩によってWebサイトの未来はどうなるか
最近、このままAIが発展していった場合にWebサイトは無くなるのではないか?という話を耳にするようになった。
この件について、改めて自分の考えをまとめてみようと思う。
Webサイトの役割
自分の考える役割としては、広く言えば「情報の伝達」だと思う。
「伝達」度合いがピンからキリまであって、「単なる表示」から「思想の表現」「ブランディング」まで多岐に渡る。
単なる表示の場合
単純にテキストで情報が羅列されているだけのWebサイトにおいてはインターフェースは何でも良く、例えば Alexa や Google Home などの IoT デバイスでも十分な情報伝達が可能だ。
仮にChatGPTが情報種別に応じた適切なUIを用意できるようになれば、情報に応じて良い感じに表示してくれるだろう。
ブランディングの場合
一方でWebサイトが「ブランディング」の役割を果たしている場合はどうか?
それぞれの思想やこだわりを表現するためには無限のUIパターンが存在すると思っている。
感覚としては絵画に近い。
しかし、MidjourneyなどAIによる画像生成の進化により、絵画もすでにかなりのクオリティのものが生成できてしまう。
画像生成のプロンプトのように思想を文字列で表現しきることできれば、AIに渡して良い感じに見せてくれる未来が訪れる可能性はゼロではない。
Webサイトの情報源としての役割
今のWebサイトには対AIとしての情報源という役割もある。
これも「今は」というだけで、AIに対して直接情報を提供できるインターフェースが登場することが予想されるので、何とも言えない。
認知外の情報
チャット形式で欲しい情報を取りに行けるのはユーザーからすると大変便利だが、俯瞰してみるとそれは良くも悪くもピンポイントの情報しか取れないということである。
Webサイトは、企業・組織・個人が情報を発信するためのプラットフォームであり、ユーザーが訪れた際に自分自身の認知外の情報を得られるメリットもある。
認知外の情報は能動的には取りに行けない。
創作意欲、表現欲
AIに生成してもらったものではなく、自分自身で表現したいという欲は存在する。
創作はより表現の幅が広がる方向に進んでいく。
2Dから3Dへ。
静から動へ。
視覚のみから五感(視覚・聴覚・嗅覚・触覚・味覚)へ。
当然これらはAIも扱えるように進化していくだろうが、それをすべてAI任せにするのはさすがに面白くない。
結局は人間の創作意欲 vs AIの進化という戦いか。
自分自身で表現するよりも、AIによる表現の方が圧倒的に優ってしまった場合、人間は創作をやめるのか?
趣味になってしまうのか?
現代においても技術の進化によって様々なものが低コストで作れるようになったが、職人の手造り商品にはリスペクトがあるし、値段も高い。
とはいえ職人の数は徐々に減っていってはいるだろう。年齢の問題もある。
技術の進歩以上の能力を持っていないと結局は価値は下がっていってしまう。
となると、新しい技術(AI)をより使いこなして、より高度な作品を作っていくしかない。
技術は汎用化されて、創ることはどんどん簡単になっていく。
そのため、すべてのモノづくりの価値は相対的に下がっていくだろう。
AIに仕事を奪われるというよりは、仕事の価値を下げられてしまうことでやる意義が薄まってしまうということが各所で起きるのだろう。
業種によってAIが得意な領域、不得意な領域があるだろうが、この最近の進化スピードの前ではもはや誤差かもしれない。
最初はソフトウェアからだろうが、今後ハードウェアも劇的に進化するだろう。すでにロボットもかなり進んでいる。
書いていてだんだんツラくなってきた・・・
例外としてAI自体を作る仕事の価値は上がりそう。
整理
企業・組織・個人には情報を発信し、他と差別化したい欲がある。
それぞれの思想やこだわりを表現するためには無限のUIパターンが存在する。
また、チャット形式はユーザーにとって能動的なアクションとなるため、認知外の情報を取りに行きづらい。
これらにより、最も表現がしやすい場としてWebサイトはなくならないが、誰でも簡単にハイクオリティのサイトが作れるようにはなっていくだろう。
今はAIの扱い方にもテクニックがいるが、これから急速にUXが改善されていって、誰でも簡単に扱えるようになっていく。
Webサイトによって集客したかった事業や商品そのものに力を入れるべきという話なのかもしれない。
(それすらもAIによって価値が下がってしまうかもしれないが)
Webサイトは業種に縛られない Horizontal なものなので、需要はそれなりに続きそうではある。
また、Webサイトは作って終わりではなく運用こそが大事。
個人的には、AIにとっては作る以上に改修の方が難しいのではないかと思っている。
なので、当分はその部分の人的労力は必要な認識ではいる。
「〇〇に機能を追加して」と指示して、実際にそのまま公開されてしまうのも怖い。
AIに与える実行権限については全領域において論点になってくるだろう。
中身が完全にブラックボックスでは運用しづらいので、やはり有識者は必要であると思う。
そういう意味では、作る工程がただ楽になるだけで、Web制作の需要は引き続きありそう。
まとめ
Webサイトの話をしようと思っていたのに、話が大きくなってしまった。
持論としては、Webサイト相当のものはより自由に表現ができる場として残ると思っている。
一方で、将来的にはAIによって誰でも思い通りの表現ができるようになると思われるが、実は「思い通り」という部分の難易度は高い。
そもそも自分が作りたいものとは何なのか?というところの言語化が難しい。
結局、今のWeb制作業界においてもその部分の言語化が大事で、それによって成果物のレベルが変わってくる印象もある。
より本質的な「表現」の質を問われる時代に突入しようとしているという話かもしれない。