THE MODELを事業に落とし込む
弊社はmicroCMSという日本製のヘッドレスCMSを開発・運営している。
microCMSの事業規模はプレシリーズAくらい(資金調達はしていない)で、今はシリーズAを目指している段階。
社内リソースはまだ少なく、わりと開発に手一杯でマーケにも営業にもあまり手をかけられていない状況。
プロダクトの受注は今のところほぼ100%インバウンドで、それ自体は悪いことではない(伸び代はあるという意味で)。
有料プランにはトライアル期間を設けているが、ここの解約率も悪くない。
あとは「売り方」を確立したいということで「THE MODEL」を読んだ。
マーケ→インサイドセールス→カスタマーサクセスを効率化していく話だが、参考になる部分が大きかったのでmicroCMSに落とし込んでみる。
アウトバウンドセールス
弊社は創業者が2人ともエンジニア(デザイナー)で、営業というものが基本的に苦手だ。
メール営業などを試してみたことがあるが、効率が悪すぎて続けられなかった。
どちらかというとマーケティングと開発に力を入れて、インバウンド中心で攻めていく形の方がコスパが良く、性に合っていた。
こちらからアプローチしなくても、ウェブサイトのフォーム入力を通じて流入するインバウンドのリードの多くはSMB企業であり、大手企業を担当する営業部門は自分たちで商談を発掘しなければならない。
まさしくこの通りで、今のところSMB中心な攻め方になってしまっていて、インバウンドで得られないような大企業のリードはやはり自分たちで取ってこなくてはならない。
一方で、やはりアウトバウンドセールスは難易度が高いので、アメリカではインサイドセールスを経験してからアウトサイドセールスに異動するというケースが多いらしい。
そういう意味では現状はインサイドセールスに注力して、SMBの中でも勢いのあるスタートアップなどを積極的に獲得して事例を作った上でアウトバウンドに攻めていくというのも一つの手だ。
インサイドセールス
リードを育てて商談まで持っていくのがインサイドセールス。
microCMSは誰でもアカウント登録が可能なサービスなので、基本的にはアカウント登録が最初のリードとなる。
アカウント登録の大半はエンジニアによるものになっている。(ヘッドレスCMSの導入にはエンジニアが必須なため)
そしてエンジニアの場合、検索能力が高いので、他の競合サービスなども自分で調べ上げるケースが多い。
肌感では、こちらから無理に営業をしたところで、意思決定に大きな変化は与えなそうな気がしている。
また、個人メールアドレスで登録しているエンジニアは、用途としては個人ブログだったり技術検証目的であることが多いので、画像の円グラフでいうところの「見込みなし」としてカウントして良さそうだ。
運営サイドとしても趣味の個人開発利用においては、出来る限り制限なしにフリーで気持ち良く使ってもらいたいと思っている。
一方で、企業におけるヘッドレスCMSの「利用者」は非エンジニア(マーケターや編集者)となるので、こちらのアプローチもしていく必要がある。(導入者と利用者の職種が異なるのが難しいところ)
マーケターや編集者はアカウント登録ではなく、お問い合わせフォームや資料請求からアクセスしてくるため、直接商談につながるが、如何せんその数は多いとは言えない。
そこで例えばイベントやセミナーを開催することでお問い合わせフォームに達する前にリード化することができる。
今後は非エンジニアのリードを増やしていきたいので、何らかのマーケティング施策を打たなくてはならない。
そして、柔らかめのリードを堅くするためのインサイドセールスをしっかりと行う。
現状はリソースがないので、マーケターが営業とマーケティングを兼ねることになりそうだ。
カスタマーサクセス
ユーザーからのお問い合わせベースのサポートには力を入れていて、評判も悪くない。
カスタマーサクセスは最終的に顧客のロイヤリティを高めて、クチコミによる新たなリードの創出や、アップセル・クロスセルによる売り上げの拡大につなげることが目的だ。
本書によると、ここに関してはしっかりと顧客のヘルスチェックを行い、どの顧客が優良な顧客なのかを知っておく必要があるそうだ。
そのための指標として次の2つを挙げている。
- 属性スコア:企業規模、業種、役職など属性情報によるスコアリング(理想的なターゲット)
- 行動スコア:ウェブサイトへのアクセス、コンテンツのダウンロードなど行動情報によるスコアリング(購買意欲)
マーケティングオートメーション(MA)ツールを用いればこれらの判定を自動で行うことも可能だ。
microCMSにおける行動スコアの指標としては例えば、APIの作成個数、管理画面の利用頻度、APIの叩かれる頻度などだろうか。
あとは高度な使い方をしているという意味で、繰り返しフィールドを使っているか、POST系APIを利用しているか、なども指標に入りそうだ。
マーケティングオートメーション(MA)
著者がマルケト社の創業者ということで、全体的にMAをオススメする内容にはなっている。
本書を読んでいると確かにMAは革新的なソリューションだと再認識した。
マーケティングオートメーション自体の歴史は古い。1992年に設立されたユニカをはじめとして1999年にエロクア、2000年代中盤にマルケト、ハブスポット、パードットなどが設立されている。
とあるように、実はMA自体はかなり古くからある。
マーケティングに関わる人にとってはもはや当たり前の概念なのだろうか?(エンジニア畑出身なので分からない・・・)
本書には「リサイクル」という概念が登場する。
売り上げ目標が2倍・3倍と高くなるにつれ、それを達成するためのリード数は2倍・3倍どころではなく、それ以上の獲得が必要だ。
その原因としては、リードを増やすためのマーケティング施策によって、どうしても確度が低めのリードも混ざってくるというのと、数が多い分インサイドセールスの対応が追いつかなくなってしまうところにある。
そこで、取りこぼしてしまったリードを「リサイクル」することで商談化率をキープするという概念だ。
リードの中には「将来購買の可能性はあるが今すぐではない」層が65%いると言われているので、この層は無理に追わず、また半年後などに興味が復活してきたタイミングでまたリードに戻すということを行う。
実際、それを人の手でやるのは不可能に近いが、MAを用いることで自動的に興味が復活してきた顧客を発見し、アプローチすることが可能だ。
もちろんそのためには常に指標による顧客のスコアリングが必須となる。
確かに一度は離れてしまった顧客が半年後に再度料金ページに訪問したら、可能性がありそうだ。
MAはスタートアップ初期でも導入すべきか?
これは難しいところだ。
MA導入にはだいたい月10万以上はかかるので、コスト的には結構かかる。
かといって企業が成長していくにつれ、その料金は従量課金で増えていくので、コスト的に厳しいのはどのフェーズでも一緒かもしれない。
月数十万円〜数百万の価値があるのか?といわれたら、そこはあるのだと思う。
顧客が増えれば増えるほど、手動で顧客を管理かつヘルスチェックをするのは厳しくなってくる。
いくら営業マンを雇っても足りないという状況をMAが解決してくれる。
弊社の場合は、アカウント登録してくれた人へのフォローアップのメールなどはすべて手動で行っているので、数が増えてくるとそのうち限界が来ると思っている。
まずは、手動では処理しきれない!というほどリードを増やすことの方が優先だよねという判断をした。
まとめ
主にインサイドセールスの重要性、課題、それを解決するためのMAについて学ぶことができた。
弊社の場合は、そもそもそれ以前に入り口のリード数を増やさなければならないと感じた。
社内で上記内容をシェアした際にも、「バケツの穴塞ぎも大事だけど、そもそも注がれる水が足りてないよね」という話になった(苦笑)
思うに、水を注ぐことと穴を塞ぐことはどちらも交互にやっていかなくてはならない。
注がれる水は例えば広告を打てば簡単に増やすことは可能だが、受注率を維持するためにはできる限りオーガニックを増やしていきたい。
一旦はひたすらマーケティング施策を洗い出して、とにかく数をこなすことに注力したい。
THE MODELのエッセンスを活かせるようになってくるのはそれからだと思う。