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教えるのが上手い人はUXデザインの才能がある

  • デザイン

完全に持論ではあるが、表題のようなことを思っている。その根拠を話していこう。

まず、UXデザインというのは直訳するとユーザー体験をデザインするということだが、人によって体験の感じ方はそれぞれだ。結局プロダクトのターゲットとなる層に対して、最大公約数的に良いと思われる体験をデザインできるかどうかという点が重要になる。最大公約数という部分が難しいが、基本的には正規分布のような形かピラミッドのような形でリテラシーは分散している。

いわゆる「平凡」な層が大部分を占めており、最大公約数を取るには平凡に対する解像度が重要だと考えている。

そのためにはそもそも自分自身が平凡である必要がある。そうでなければ平凡な層が何を考えているかは想像の域を出ない。もちろんユーザーインタビューなどで補完することはできるが、自分自身が理解しているに越したことはない。

一方で良い体験を提供するには平凡なだけではなく、自分自身は平凡から成長した段階にいるべきだと思っている。

例えば英語の学習アプリを提供しているとしよう。ターゲットとしてはおそらく初学者が多く、その気持ちを理解していることは絶対条件だが、英語習熟のレベルはグラデーションとなっており、当然上位層も存在している。上位層をターゲットから外してしまうというのも一つの手だが、そこもターゲットに含める場合は、デザイナー自身も平凡な初学者から勉強によって上級者に辿り着いた人間であることが望ましい。例えば、「帰国子女で物心付いた頃から英語が話せます」という人ではダメということだ。

抽象化してまとめると、UXデザインが上手い条件としては、自分自身は元々平凡であり、努力によってその領域において上位に辿り着いた経験がある人である

それともう一つ条件がある。上位者になっても平凡な気持ちを忘れていないことだ。

上位者になると当然自分の中での当たり前レベルが上がっていく。平凡な層がどれくらいのレベルであったかを思い出せる力が必要だ。

例えば弊社が開発しているmicroCMSでは、管理画面からポチポチ入力するだけでAPIを作ることができる。バックエンドに精通している人であれば、APIができあがったらcurlで叩いてみる流れが一般的かもしれない。一方でフロントエンドエンジニアはCUIの操作に慣れていない人も多い。そこでできあがったのがAPIプレビューという機能で、管理画面から1クリックで実際にAPIにリクエストを送り、レスポンスのJSONを管理画面上で確認することができる。この機能は多くのユーザーから使いやすいというお声を頂くが、実はこの機能を持つヘッドレスCMSはほとんどないのが面白い。

次に、教えるのが上手い人の話に移ろう。自分は元々大学時代に6年間塾講師としてアルバイトをしていた。講師の中には教えるのが上手いと思える方が何人もいたが、正直言って学歴は関係ないと感じていた。むしろ、高学歴すぎると逆に教えるのが下手である傾向があると思っていた。

ここが先ほどの話と通ずるところで、いわゆる天才タイプは当たり前レベルが高すぎて、できない子が何故できないのかを理解できない。一方で凡人からの這い上がりタイプはその部分を自分が経験しているが故によく理解できる。自分がその時どうやって理解したのかを思い出し、その方法を伝えることができる。

要は相手のレベルに合わせて話を調整するのが上手い。これこそが平凡な人が努力によって天才に勝ち得る能力だと思っている。

自分は人にものを教えるのが得意かもしれないという方は、UXデザイナーあるいはプロダクトマネージャー(UXデザイナーに通ずるところがある)というキャリアを考えてみてはいかがだろうか。

柴田 和祈 X GitHub
株式会社microCMS 共同創業者 / デザイナー兼フロントエンドエンジニア / ex Yahoo / 2児の父 / 著書『Next.js+ヘッドレスCMSではじめる! かんたんモダンWebサイト制作入門 高速で、安全で、運用しやすいサイトのつくりかた』

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