PLGのオンボーディングからその先まで
PLG(Product-led Growth)はオンボーディングが非常に重要だ。
プロダクトを使ってもらって価値を感じてもらわないことには何も始まらないからだ。
PLGについておさらい
SLG(Sales-led Growth)はセールス中心の売り方であるのに対し、PLG(Product-led Growth)はプロダクト中心の売り方である。
PLG形式の場合、フリーミアムで誰でもアカウント登録ができ、プロダクトにとにかく触ってもらえる状態であることがマスト。
いち早くプロダクトの価値を体験してもらい、ファンになってもらい、最終的に有料顧客になってもらうのがPLGの基本的な流れとなる。
PLGのオンボーディングについて
一般的にオンボーディングと言われると、AARRRのActivation(活性化)ステップであると考えられていることが多い。
- Acquisition(獲得)
- Activation(活性化)
- Retention(継続)
- Referral(紹介)
- Revenue(収益化)
しかし、実はPLGのオンボーディングは Acquisition(獲得)→ Activation(活性化)→ Retention(継続)の全てのステップに跨っている。
出典:Product-Led Onboarding: How to Turn New Users Into Lifelong Customers
PLGのオンボーディングのマイルストーン
1. MVP(Moment of Value Perception:価値認知の瞬間)
ユーザーが自分たちの状況に即して製品を初めてイメージしたタイミング。
マーケティングチームがここを担う。
2. MVR(Moment of Value Realization:価値実現の瞬間)
ユーザーが初めて製品の価値を体験し、その製品で望む結果を得たタイミング。
開発チームとセールスチームがここを担う。
3. MVA(Moment of Value Adoption:価値導入の瞬間)
ユーザーが製品を定期的に使用し始め、生活やワークフローに組み込んだタイミング。
開発チームとセールスチームがここを担う。
PLGにおけるリードのモデル
PLGとSLGではリードの扱い方が異なる。
出典:Mastering Product Experience (in SaaS): How to Deliver Personalized Product Experiences with a Product-led Strategy
SLGの場合、まずマーケティングチームが展示会やイベント、広告などによってメールアドレスや電話番号を獲得してくる。
このリードをMQL(Marketing Qualified Lead)と呼ぶ。
これに対し、セールスチームがメールや電話などで連絡をし、商談化する。
このリードをSQL(Sales Qualified Lead)と呼ぶ。
そして商談をおこなって顧客転換し、カスタマーサクセスで継続させる流れとなる。
いわゆるTHE MODEL形式だ。
この流れでは、ユーザーが実際にプロダクトを触るのは顧客転換のタイミングとなる。
出典:Mastering Product Experience (in SaaS): How to Deliver Personalized Product Experiences with a Product-led Strategy
一方でPLGの場合は、マーケティングチームがコンテンツや広告、イベントなどの実施によりサインアップを促す。
この時点でユーザーはプロダクトを触ることになる。
その状態がPLGでいうところのMQLと言える。
次に、ユーザーが最初に価値を感じるタイミングまでプロダクトとコミュニケーション双方から誘導する。
これらはプロダクトバンパー、コミュニケーションバンパーとも呼ばれる。(参考として下記記事を置いておく)
- Product-Led Growthでやっていく|柴田 和祈
- ここ最近、スタートアップ界隈で急速に話題になっているのがProduct-Led Growth(PLG)だ。従来のセールス中心の売り方とは異なり、プロダクト中心の売り方となる。
- https://www.mythinkings.net/product-led-growth
また、プロダクトチームが機能改善や新機能開発を行うことでよりユーザーが体験できる価値は高まっていく。
そうしてプロダクトの価値を感じ、継続して利用してくれる状態になったリードをPQL(Product Qualified Lead)と呼ぶ。
それに対し、有料プランの機能充実や適切なユースケース紹介によって有料顧客に転換させる。
無料プラン向け開発は機能を届けられるユーザー数が多いために優先しがちだが、有料プラン向け開発も有料化してもらうだけの価値を創出する上で非常に重要だ。
その後はカスタマーサクセスチームが顧客要望を聞き、満足度を引き続き高めていく。
受け取った要望はマーケティング・セールス・プロダクトチームに共有され、さらにサイクルを回していく。
PQLの指標:PAI
PLGで難しいのは、MQLからPQLへの転換である。
そもそも何をもってPQLとするのかはプロダクトによって異なる。
そのための指標としてPAI(Product Adoption Indicator)がある。
PAIを言い換えるとユーザーが今後も製品を使い続ける可能性が高いことを示す強力なシグナルである。
Facebookの例
「10日以内に7人の友人を追加したユーザー」は、Facebookを継続して使用する可能性が高い。
Twitterの例
「30人をフォローしたユーザー」というルールがリテンションと成長の原動力となった。
Slackの例
「2,000通のメッセージを送ったチーム」は、今後も使い続ける可能性が他より93%も高い。
これらはPAIではなくNSM(North Star Metric)として紹介されていることも多いので、PAI ≒ NSMと捉えて良いと思う。
NSMを定めるための考え方としては下記の記事が参考になった。
プロダクト指標の作り方 - North Start Metric
PAIの見つけ方
1. リテンションカーブの算出
出典:Product-Led Onboarding: How to Turn New Users Into Lifelong Customers
2. リテンションカーブを見て、平坦になり始めるポイントを探す
- 上記の図だと21日目以降は安定している
3. 実データからリテンションを維持するためのキーとなる値を探す
- ユーザーがプロダクトに再訪問した回数
- ユーザーが試した機能の数
- ある特定機能の利用
- etc
4. 仮説に基づいたセグメントでリテンションカーブを比較する
出典:Product-Led Onboarding: How to Turn New Users Into Lifelong Customers
5. いい具合の閾値を見つける
- 例えば100通のメッセージを送ればいいのか、1000通のメッセージを送ればいいのかでいうと、1000通の場合の方がリテンションが高いのは当たり前
- チームの人数によって、達成できるラインを決めるのも良い
まとめ
PLGの場合、ユーザーがプロダクトを触るタイミングが前に来るため、各チームの動きも大きく変わってくる。
何よりプロダクトの価値を常に高めていくことが重要。(Product-ledなだけに)
そしてPAIを定めることがまず大変。
PLGはユーザーがプロダクトを触っている実データを持っているので、それをもとに様々な仮説を立て、検証を繰り返すことが大切だと思う。
- Product-Led Onboarding: How to Turn New Users Into Lifelong Customers
- Mastering Product Experience (in SaaS): How to Deliver Personalized Product Experiences with a Product-led Strategy
- PLG プロダクト・レッド・グロース「セールスがプロダクトを売る時代」から「プロダクトでプロダクトを売る時代」へ